概要
人対人や人対ロボットの対話では、情報の伝達だけでなく、相手や場面に応じた話し方の調整、知識の獲得、社会的関係の構築といった営みが同時に進行しています。 こうした対話の機序を社会言語学や語用論といった言語理論を手がかりに解明し、これを計算論的に支援する対話知能の研究を進めています。 あわせて、高度な言語運用と専門知識の双方が要求される知的財産ドメインを主要な応用フィールドとして、専門家の実務を支援する自然言語処理に取り組んでいます。 個々の要素技術の開発にとどまらず、それらを対話エージェントがオーケストレーションし、人との対話を通じて専門知識へのアクセスと意思決定を支える統合的な枠組みの実現を目指しています。
言語理論に基づくユーザ適応的な対話システム
人は対話の相手や場面に応じて、語彙や文体、話し方を無意識のうちに調整しています。 スタイルシフトやアコモデーション、エントレインメントといった社会言語学的な現象を計算モデルとして定式化することで、 ユーザとの関係性や対話の文脈に応じて振る舞いを変え、信頼関係を築いていく対話システムの実現を目指しています。 また、行間に込められた意味を対話システムがどこまで汲み取れるかという問いに対して、 語用論の理論を手がかりに大規模言語モデルの理解・推論能力を分析し、強化する研究にも展開しています。
こうした対話における適応は、言葉だけで成り立つものではありません。視線や表情、身振りといった非言語的な振る舞いもまた、関係構築の重要な担い手です。 そのため、実環境におけるマルチモーダルな対話の観測・分析から、対話ロボットやバーチャルエージェントの身体を通じた表出まで、一貫した研究を進めています。
知的財産情報処理
特許や意匠をはじめとする知的財産の実務は、法律と技術の双方にまたがる専門知識と、厳密に統制された言語運用が要求される高度な知的活動です。 この実務を担う人々の認知や意思決定のプロセスをモデル化することを軸に、 難解で膨大な特許文書の読解を支援する技術、権利範囲を的確に記述するための執筆・起案を支援する技術、 さらには言語や法域の壁を越えて国際的な知財実務を支える技術の研究に取り組んでいます。 意匠のように図面や画像が中心となる知財を対象としたクロスモーダルな情報処理もその射程に含まれます。
データセットやモデルの構築にとどまらず、企業との共同研究を通じた社会実装までを見据え、 知財実務の現場で実際に使われる自然言語処理の確立を目指しています。
共同研究・研究相談
自然言語処理・対話システム・知財情報処理に関する共同研究や研究相談を歓迎します。お気軽にご連絡ください。